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interview 経営とオフィス

各企業がどのような経営戦略や人材戦略のもとに、オフィス移転を決めたのか?
代表者のインタビューでお届けします。

[ NECネッツエスアイ株式会社 ]
SI&サービス事業本部 ICT ソリューション推進本部長 平 勝文氏(ひら・かつふみ)

7月

20

2012

NECネッツエスアイ株式会社 様
「オフィスづくりは経営戦略そのもの」NECネッツエスアイの終わりなき挑戦。

NECグループにおけるネットワークソリューション事業の中核会社、NECネッツエスアイ株式会社は2010年10月、「飯田橋ファーストタワー」に本社機能を移転した。 東品川旧本社時代から同社が取り組んでいた「EmpoweredOffice」を全館に拡大した飯田橋本社では、移転直後から現在に至るまで、日々さまざまな取り組みでオフィス改革を推進している。2011年には、東品川旧本社に続いて2度目の「日経ニューオフィス賞 情報賞」を受賞した同社の挑戦について、同社SI&サービス事業本部ICTソリューション推進本部長、平勝文氏に話を伺った。

新たな本社のコンセプトは「OFF」と「プラス」の両立

JR線と地下鉄4線が乗り入れるターミナル駅・飯田橋。地下鉄「東西線」と「南北線」が唯一交わる駅であることから、「東京のへそ」と呼ばれることもある交通の要衝である。NECネッツエスアイ株式会社が、本社の移転先としてこの飯田橋を選んだのは、交通アクセスの利便性が大きいと平氏は語る。 「旧本社は東品川の運河沿いにあり、防災面でも不安材料がありました。変電施設はにあり、高波などが起これば電気供給がストップしかねません。そこで、防災上の観点からも移転の必要を感じていました」(平氏) さらに、東品川旧本社と旧芝浦オフィスを統合し、拠点を集約することで業務効率を高める狙いもあったという。 しかし、立地が改善されれば賃料も高くなる。従来と同じオフィスづくりのままで移転すればコストがかさむだけだ。この問題を解決したのが、同社が提唱するオフィス改革の実践であった。 「飯田橋本社の面積は、旧本社と芝浦オフィスの合計から約36%削減しました。これにより、賃料単価が大幅に上がっているにも関わらず、オフィスコストを約20%減らすことに成功しました」(平氏) 平氏によると、同社では今回の移転における基本コンセプトとして「『OFF』と『プラス』の両立」を掲げていたという。これは、「スペースとコストはOFFする、ワークはプラスする」という発想で、オフィスのあらゆるムダをカットすることで、結果的に社員が働きやすい環境をつくれるとの考え方である。 「たとえば、それまで部長クラスの人間はひな壇に座っていたのですが、移転と同時にすべて廃止しました。その結果、部長が部下とデスクを並べて仕事をすることになり、部門内のコミュニケーションが活性化しました」(平氏) 惑いを示す部長もあったようだが、平氏らプロジェクトメンバーは一人ひとり時間をかけて説明し、納得してもらったという。それまで各部門を仕切っていた壁や、密閉された会議室などは、飯田橋本社ではほぼ廃止されている。   img_003 「壁で仕切られていると、どうしても壁の前にはキャビネットなどの什器を配置したくなります。そうすると、壁の厚みと什器のスペースでかなりの面積を取られることになり、この部分がムダになっていることに気づきました。飯田橋本社では原則としてすべての壁をOFFすることで、使用可能な面積をプラスすることができたわけです」(平氏)   また、壁を取り払ったことでフロア内の視界がクリアになり、「誰が、どこで、何をしているか」が一目瞭然となった。管理者は部下の動きを把握しやすく、部下は上司の目を意識して良い意味での緊張感を持って仕事に取り組むことができるようになった。

 

「ICT」「空間」「設備」を融合、「人」に力を与えるオフィス

同社では、東品川旧本社の時代から数々のオフィス改革に取り組んできた。オフィス改革の根幹となる考え方が「EmpoweredOffice」である。Empowered-Officeというのは同社の造語で、「人が活き活き働ける活力あるオフィス」といった意味合いで使われている。これについて、平氏は次のように説明する。 「当社はもともとICT(Information Communication Technology)を利用したソリューションで、お客様にとって仕事をやりやすい環境づくりをお手伝いして参りました。しかし、さまざまなお客様のお手伝いを通じて、ICTのソリューションだけでは十分ではないということに気づいたのです。結局のところ、仕事をするのは機械やソフトウェアではなく、それを使う『人』です。つまり、働く人に良い環境を整えるにはどうすればよいかを考える必要があったのです」   img_004 EmpoweredOfficeという造語自体は、2007年2月に同社が開催した「プライベートフェア」が初出だが、同社のオフィス改革への取り組みはそれ以前からすでに始まっていたという。   オフィスを構成するのは、「空間」(=建物内のスペース)、「設備」(=インフラや什器、オフィス機器などのハードウェア)、「ICT」に加えて、そこで働く一人ひとりの「人」。その中でも、もっとも重要なのが「人」である。「人」が仕事をしやすい環境をつくることを目的として、「空間」「設備」「ICT」を融合し、最適な環境を整えることが必要なのである。一般社団法人ニューオフィス推進協会(旧称・社団法人ニューオフィス推進協議会)では「SECIモデル(野中郁次郎氏が提唱した組織的知識創造理論)」をベースとしたクリエイティブ・オフィスの理念を掲げているが、「SECIモデルの具現化を目指したのがEmpoweredOfficeです」と平氏は語る。   img_005-1img_006 飯田橋本社の2階は、来客用の応接スペースであると同時に、EmpoweredOfficeの体験スペースとしての機能が与えられている。来客はここで、EmpoweredOfficeに触れ、ワークスタイルを仮想体験することで、その効果を頭と身体で実感することができる。さらに、同社の社員が実際に働いているオフィスを見学し、社員がいかに活き活きとコミュニケーションしているかを実感することができる。   「今年4~6月のオフィス見学来場社数は187社。約半数は部長以上の役職者同伴でした。1日平均3~ 4組のお客様が見学に訪れています」(平氏)   本誌取材中にも、2組の見学者グループが訪れていた。見学者にはリピーターも多く、同じ会社の中で、上から下へ(トップ→取締役→部・課長といった順にオフィス見学にやってくるパターン)、下から上へ(その逆のパターン)、横へ(各部門の人間がかわるがわるやってくる)など、さまざまなパターンがあるという。   「たくさんのお客様にご来社いただいたこともあり、昨年の震災後、多くの業界で売上が落ち込んでいるにもかかわらず、当社は対前年比プラスと業績も好調です。これも、本社移転効果のひとつと申し上げてよいでしょう」(平氏)

 

ペーパーレス化とゼロディスタンス・オフィス

飯田橋本社には、東品川旧本社と芝浦オフィスに勤務していた約3,000人の社員が集約されている。3分の2以下の面積に同じ人数を収容するため、さまざまな改革が実施された。「グループアドレス(グループ単位でのフリーアドレス)」やペーパーレス化である。 「ペーパーレス化は大前提でした。まず、個人が保有していた紙の資料類は極力破棄させ、必要なものは電子化しました。これにより、資料類を収納するキャビネットの数を従来に比べて半減することに成功しました。また、各自のノートパソコンをシンクライアント化し、無線LANでプロジェクターやモニターディスプレイと接続できる環境を整備しました。この結果、ミーティングなどのたびに資料を人数分プリントアウトする必要がなくなり、プリンタ複合機やシュレッダーなどの機器も従来の約6割削減することができました」(平氏)

 

すなわち、キャビネットや複合機などの場所を取る什器や機器の数を減らすことで、オフィススペースに必要な面積を確保しているわけだ。さらに、個人用のデスクワゴンや、部課長クラスの袖机などもすべて廃止し、ノートパソコンをはじめとする個人の荷物はすべて、各自に割り当てられたキャビネットの1区画に収めることとした。こうした取り組みの結果、同社の紙の使用量は移転前と比べて半減。さらに、電力使用量も半減し、オフィスコストは年間約5億円削減された。 また、オフィススペースの確保を目的としたペーパーレス化は、思わぬ場面で効果を発揮したという。 「あの、3.11の震災では東京でも震度5強(注・震度6弱とする説もある)の激しい揺れに見舞われましたが、飯田橋本社では被害はほぼゼロでした。これは、大型キャビネットなどの倒れてくる物が一切なかったことや、デスクの足元に物を置かず、いざというときすぐ下に潜りこむことができたからです」(平氏)   img_008 ちなみに、東日本大震災では、同社の東北支店も大きな被害を受けている。電力が回復した3月13日(日)夕方5時ごろから、同社では全社を挙げて東北の支援体制に入った。日本全国を網羅するネットワークを駆使して援助物資を集め、輸送ルートを確保して次々に送りこんだという。これを可能としたのが、飯田橋本社のコンセプトのひとつである「ゼロディスタンス・オフィス」である。   「当社は、全国に約6,000人の社員が主要都道府県の拠点に配置されています。これらをネットワークとして有機的に結合し、また遠隔地のお客様との距離を縮めるため、テレビ電話などを利用して24時間つながるオフィスを構築しています。震災のときにはこれが役に立ちました。また、平時でも社員が遠隔地へ出張する必要がなくなり、出張費用は以前と比べて約20%削減できました」(平氏)

クリエイティブ・ワーキングを推進する数々の「仕掛け」

img_009-1img_010 東品川旧本社時代から同社が工夫を凝らしてきたのが、オフィスにおける「クリエイティブ・ポイント」の創出だ。壁のないオフィス、固定席のないグループアドレスは、社内のコミュニケーションを活性化させる有効な手法であったが、さらに創造的なアイディアが生まれる場所として、さまざまなクリエイティブ・ポイントが仕掛けられている。   飯田橋本社は22階~28階の高層フロアと、2階~5階の低層フロアから成り、クリエイティブ・ポイントは各フロアに必ず用意されている。たとえば、壁際にディスプレイを設置し、2~3人が集まって立ったまま簡単な打ち合わせができる「立ち会議」スペース。4 ~ 5人以上が集まるミーティングでは、プロジェクターから壁やテーブルの天板に映写することで、全員が自由に意見を出し合える場をつくりだしている。周囲に壁がないため、近くを通りかかった他部門の人間や上司が横から口を出すこともでき、より活発な意見の交換が可能だ。   そして、飯田橋本社の中心的なクリエイティブ・ポイントが、4階のほぼ中心に位置する円形のミーティングスペース「AGORA」である。   「『AGORA』とは、古代ギリシャの都市国家にあった共同広場の名前です。そこでは、誰もが自由に発言でき、創造的なアイディアが次々に生まれてきました。ここは、いわば『見せる会議室』です。新しいソリューションの発表など、その場にいる会議の出席者だけでなくフロア全体に伝えたいことは、この『AGORA』でプレゼ
ンテーションを行うようにしています」(平氏)   img_011 img_012 これらのクリエイティブ・ポイントは機械やソフトウェアの集合体だが、それらを実際に運用するのは個々の「人」である。移転直後に同社が行った社内アンケートでは、半分弱の社員が新本社に何らかの不満を感じていると回答したという。しかし、それらのほとんどはエレベーターなどビル設備への不満であり、オフィスそのものに対する不満はほとんど聞かれなかったと平氏は言う。   同社では積極的な人員採用に取り組み、営業部員を中心に社員が増えているという。これに対応するため、3階の営業オフィスを移転後1年で全面改装したほか、他のフロアでもしばしば大がかりなレイアウト変更が行われている。   「こうしたフレキシブル性も、これからのオフィスに求められる重要なポイントだと思います。今後は、全国の支店・事業所を順次EmpoweredOffice化していくことで、全社のネットワークを拡充するとともに、小規模なオフィスのお客様にもご提案できるようなモデルケースをたくさんつくっていくこと

を考えています」(平氏)   止まることのない同社の挑戦は、今この瞬間にも現在進行形で続いている。

 

PICK UP!

エントランス
飯田橋本社の2階エントランス。連日、大勢のEmpoweredOffice見学者が訪れる
会議室
白い壁はそのままプロジェクターのスクリーンになる
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