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interview 経営とオフィス

各企業がどのような経営戦略や人材戦略のもとに、オフィス移転を決めたのか?
代表者のインタビューでお届けします。

[ 株式会社TBWA\HAKUHODO ]
CFO Office 総務部 部長 Senior Management Planning Director 東海 正光氏(とうかい まさみつ)

9月

18

2012

株式会社TBWA\HAKUHODO 様
甦る伝説のディスコ「ジュリアナ」はTBWA\HAKUHODOの新拠点

博報堂とTBWA\Worldwide、日本とかい世界を代表する広告代理店のジョイントベンチャーとして2006年8月に誕生した「株式会社TBWA\HAKUHODO」。

同社は、過去のジョイントベンチャーのほとんどが失敗に終わった原因を日本と海外の「文化の交流の欠如」にあると分析し、「文化の融合を促進するには、まず”器”が重要」とのトップの認識から、理想的な”器”となるオフィスを探し続けたという。やがて同社が見つけた”器”はビジネスを成功へと導き、2012年3月には、同ビル1階にオフィスを増床する運びとなった。

同社CFO Office 総務部部長、東海正光氏に話を伺った。

 

 

“手に入れる”のではなく、”手を入れる”という発想

天井までの高さが7メートルに達する、窓のない巨大なスペース。猛暑の照りつける8月下旬に取材に訪れたそのオフィスは、外界から隔絶された異空間のように感じられた。

「ここはかつて『ジュリアナ東京』のあった場所です」という東海氏の言葉に周囲を見渡せば、入り口に続くスロープや突き当りのバーカウンターなど、90年代初頭における伝説の巨大ディスコの面影がまざまざと残っていた。天井からは、当時のものでこそないが、ミラーボールまで回転している。バブル末期の熱狂ぶりを知る者も、知らない者も、思わず目が釘づけとなるに違いない光景がそこに展開されていた。

東京・港区芝浦の「第3東運ビル」。JR田町駅から徒歩7分ほどの立地にあるここは、店舗やショールーム、遊技場などさまざまな業種のテナントが入居するアミューズメントビルである。TBWA\HAKUHODOは会社設立から約半年後の2007年2月、同ビルの5階・6階の2フロアを使用して本社オフィスを立ち上げた。

「5階と6階はもともと、ボウリング場にするために作られたそうです。そのため、柱も壁もない、ひろびろとした空間が広がっていました。TBWAと博報堂が文化的融合を果たす”器”として、これ以上のものはないように感じられました」(東海氏)

同ビルを見つけるまでにすでに3ヶ月かかっていたが、そこから同社が入居するまでにはさらに3ヶ月を要した。既存の施工業者による「お仕着せのオフィス」ではなく、「自分たちの手で創り上げたオフィス」でなければ意味がない、と誰もが考えたからだという。

「社内のクリエーターたちが自由にアイデアを出し合い、デザインを決定し、施工業者さんと一つひとつ相談しながら設計を進めていきました」(東海氏)

 

 

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同社のイメージする理想のオフィスとは、すでにどこかに存在している場所を”手に入れる”ものではなく、自ら”手を入れて”創りあげるものだ、という考え方である。それが、他に類例を見ない同社のオフィスを生みだしたのだと東海氏は語る。5階と6階のオフィスは、2007年度の「第20回日経ニューオフィス賞」経済産業大臣賞、クリエイティブ・オフィス賞を受賞している。

 

「このときは、施工業者さんに薦められて応募することにしました。もちろん、応募すればきっと受賞できるだろうと自負していましたが。そこで今回のMALオフィスでは、こちらから狙って獲りにいく、というつもりで積極的に応募しました(笑)」(東海氏)

 

ちなみに審査の結果、同社1階のMALオフィスは2012年度の「第25回日経ニューオフィス賞」でふたたび受賞し、同社の自信を見事に裏付けることになった。

 

クリエイティブが生まれる”公園”のようなオフィス

5階・6階の本社オフィスに入居する以前、TBWA\HAKUHODOは2ヶ所のオフィスに分断されていた。TBWAからのメンバーは東銀座にオフィスを構え、博報堂からのメンバーはより田町駅に近いインテリジェントビルに入居していた。前者は繁華街にあり、後者はビル内にコンビニや飲食店舗などを抱えているという利便性があった。これらに比べると、新たに本社オフィスが入る「第3東運ビル」は、駅からは中途半端に遠くなり、周囲の環境もいささか不便に感じられたようだ。トップの決断により移転統合が決定したとき、社内には不満の声も少なくなかったという。

「そこで、5階・6階の工事が行われているとき、交替で社員をオフィス見学に連れてくることにしました。自分たちのアイデアがどんどん形になっていくようすを見せることで、社員のテンションも次第に盛り上がってきました」(東海氏)

 

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こうして完成した本社オフィスは、オフィス=作業する場所、という既成概念を根底から覆す、アイデアと創造性に満ちたものになった。

 

6階のエントランスは、純白の天井と床に、カーペットやソファの色彩を上品にちりばめたカラーリングが効果的に使われている。インターフォンとして使われているのは、レトロな昭和のデザインのプッシュフォン。機能性を損なわない範囲で、適度な遊び心に満ちあふれている。

 

そんなエントランスを抜けてワークスペースに足を踏み入れると、初めて見る者は誰もが思わず感嘆の声を漏らすに違いない風景が眼前に広がる。ウッドデッキの幅広い階段が6階から5階へとつながり、吹き抜けの大空間となっているのだ。それはまるで、丘の頂上から麓の街を見下ろしているようだ。

 

「5階・6階オフィスのコンセプトは”公園”。文化が融合し、そこに新しいクリエイティブな発想が生まれる公園をテーマとしました。そこで、木が生えていたり、小山があったり、ベンチが置かれていたり、という視覚的なイメージを創りこんでいきました」(東海氏)

 

もとボウリング場として設計された建物の躯体を活かし、床面の高低差もそのまま残してある。1,200坪超の面積とその高低差が、実際以上に広大な空間と感じさせているのだ。

 

取材時点で、完成からすでに5年半あまりが経過していたにも関わらず、本社オフィスのイメージは少しも古びていない。むしろ、日々使いこまれていくなかで、独特なミーティングルーム。それらは芝居の書き割りのように背景に溶け込み、そこで活き活きと働く社員たちの姿は、ステージの上の千両役者のように輝いて見えた。

 

「以前は、私どもの方からクライアントの元へお伺いするのが当たり前でしたが、こちらのオフィスが完成して以来、クライアントの方から『ここで打ち合わせしたい』とおっしゃって、足を運んでいただくことも増えました」(東海氏)

 

 

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ジュリアナ再生の目的は増員対応とセキュリティ

本社オフィスの成功はビジネスの成功につながり、TBWA\HAKUHODOは順調に業績を伸ばしていった。その成長は、必然的に「人員の増員」という結果をもたらした。2006年8月の設立当初約290名だった社員数は、2012年8月時点で400名を超えた。じつに、6年間で4割近く増えていることになる。

「スペースには余裕があったので、20~30名規模の増員には対応することができたのですが、その後の急激な増員体制に追いつかなくなり、オフィスを拡張するというプランが浮上しました。そこで、いい場所がないかと候補地を探しはじめたのですが、たまたま1階のテナントが退去することが決まり、2011年の1月ごろ見にきたのですが、ひと目見て『これは使える!』と思いました。それがこの1階オフィスです」(東海氏)

当時、1階部分にはサーフショップが入居していたが、「ジュリアナ東京」の残置物はほとんどそのままの状態で残されていた。もともと倉庫として設計されていたため、窓はなく、面積は約365坪。天井は、5階・6階の2フロアが吹き抜けになっている本社オフィスよりもさらに高い、広大な空間であったという。

何より、40代~50代のいわゆるバブル世代にとって象徴的な意味を持つ伝説のディスコの跡地である。当時の流行の最先端であり、常に熱気と興奮に満ちていた場所の持つエネルギーは、同社が発信する新しいクリエイティブに大いに役立つと考えられたに違いない。

「私自身は残念ながら営業当時のジュリアナに行ったことはありませんが……お客様からはよく『あ、これはジュリアナだ』『あの頃のままなんだね』といった感想を耳にします。やはり、80年代末から90年代初頭に青春時代を送った人たちにとっては特別な場所なのだなあと実感しています」(東海氏)

1階オフィスの増床が決まり、新たな拠点づくりのコンセプトが策定された。5階・6階の本社オフィスが、自然をモチーフにしたカントリー・テイストで構成されているのに対し、1階オフィスは、かつての「ジュリアナ東京」を彷彿とさせるモダニティをモチーフに構成されることになった。そしてもうひとつ、これはクライアント側からの要請として”セキュリティの強化”という課題があったという。

「窓がなく、入り口がひとつしかない構造は、セキュリティ強化のためには好都合でした。じつは途中まで、エレベーターホールにつながるドアを新しく作ろうかとも考えていたのですが、ここは社員の日常の利便性よりもセキュリティを重視した格好です」(東海氏)

結果的に、同じビルでありながら、5階・6階の本社オフィスから1階のMALオフィスへ行くためには一度ビルの外に出なければならないという構造になったが、そのことで1階オフィスのセキュリティレベルはより高められることになった。

 

 

5階・6階の成功体験から生まれた1階オフィス

img_0071階オフィスのセキュリティレベルは、次の3段階で構成されている。

まず、バーカウンターなどが設置されたラウンジは、来訪者が誰でも出入りできる「セキュリティレベル1 」に設定。エントランスとラウンジの間は、「向こう側が見える、聞こえる」金網のフェンスで仕切られている。次に、1階オフィスのメンバーだけが出入りできる執務エリアは「セキュリティレベル2」に設定。ラウンジと執務エリアを隔てる壁は、天井との間に隙間を作ってあり、「向こう側は見えないが、かすかに音は聞こえる」状態となっている。さらに、メンバーの中でも一定の権限を持つ者だけが出入り可能なハイセキュリティエリアが「セキュリティレベル3」である。執務エリアとハイセキュリティエリアとの間の壁は、「完全に見えない、聞こえない」状態が保たれている。

 

また、採光窓のない環境で仕事をすることになるため、天井照明には「スカイグリッド」という自動調光システムを採用。全部で600本使用されているシームレスランプのうち、400本を白、200本を黄色とし、時間の推移に合わせて明るさや色味を調整することで朝の光・昼の光・夕方の光を表現するもの。これによって時間の経過を実感でき、社員の体調管理にも役立つという。

 

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1階オフィスの拡張プロジェクトを主導したのは、TBWA\HAKUHODOの社員の中で1階へ移動するメンバーの中から選抜された10名のデザインチームであったという。実際にそこで働くことになる人間が自ら”手を入れて”オフィスを創りこむ、というのは、5階・6階の本社オフィスのときと同じ手法である。前回の成功体験に基づく同社ならではの方法論といっていいだろう。

 

「自分たちがどんなオフィスで働きたいのか、それを一番理解しているのは社員本人にほかなりません」と東海氏は確信をもって断言する。

 

「ジュリアナ東京」時代の残置物をできるだけそのまま活かしたオフィスづくりも、彼らデザインチームの考えを反映したものだ。執務エリアの突き当たりはかつての「お立ち台」であり、ラウンジのバーカウンターも、トイレも、かつてのジュリアナそのままである。

「クリエイティブな仕事ですから、アイデアが枯渇したら最後です。それだけに、自由な発想が生まれる環境づくりは永遠のテーマだと考えています」(東海氏)

 

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