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interview 経営とオフィス

各企業がどのような経営戦略や人材戦略のもとに、オフィス移転を決めたのか?
代表者のインタビューでお届けします。

[ 株式会社ワンオブゼム ]
経営本部 高橋 友美氏

10月

22

2013

株式会社ワンオブゼム 様
オフィスの中に“街”を再現した働き方を変える働く場所。

2011年1月、マンションの一室で産声を上げた株式会社ワンオブゼム。設立直後に3.11震災が発生したのを皮切りに、さまざまな逆風にさらされながらも事業を軌道に乗せ、組織を成長させて、2012年4月には初めての自社オフィスを新宿1丁目の「小杉ビル」に開設する。ベンチャー企業によく見られる若々しい自負を込めた「One and only」でなく、敢えて自戒を込めて「One of them」を社名に掲げているが、他に類例のないオリジナリティとクリエイティビティにあふれた同社のオフィスは、各方面から高い評価を受けている。同社経営本部・高橋友美氏に話を伺った。

 

オフィスが働き方を変えるという考えに基づいて構築
会議室「ブラック」の側面。黒板にはチョークで社内外からの寄せ書きが

会議室「ブラック」の側面。黒板にはチョークで社内外からの寄せ書きが

「ホワイト」の室内。テーブルの天板は廃材にコーティングを施している

「ホワイト」の室内。テーブルの天板は廃材にコーティングを施している

超高層ビルが整然と建ち並ぶオフィス街一色の新宿駅西口方面に比べ、繁華街や住宅街、店舗や雑居ビルなどさまざまな色彩を持つ街並みが広がる新宿駅東口方面。地下鉄の新宿御苑前駅と新宿三丁目駅の間、靖国通り沿いに位置する「小杉ビル」は、2011年8月に竣工した地上10階建てのコンパクトなインテリジェントビルである。同ビル4階にスマートフォンネイティブアプリ事業、モバイルソーシャルゲーム事業、インターネット・マーケティング事業などを展開する株式会社ワンオブゼムが入居したのは2012年4月。同社の設立から約1年3ヶ月後のことである。

「立ち上げ当初は、当社代表である武石の自宅マンションをオフィスとして、2名体制でスタートしました。その後、新宿東口の『ダヴィンチ新宿ビル』内のレンタルオフィスに移り、社員数が10名前後まで増えたところでこちらへ移転することになりました」(高橋氏)

レンタルオフィス時代には、いわゆる「普通の、どこにでもあるオフィス」であったという。だが、同社はここで初のオリジナルコンテンツである「海の上のカメ農園」をリリースし、数ヶ月でユーザー数70万人を超える人気コンテンツへと成長させた。さらに、日本を代表するベンチャーキャピタル「グロービスキャピタルパートナーズ」「インフィニティベンチャーズLLP」をパートナーに迎え、同社は事業を加速させていく。そしてついに、同社にとって初めての「自社オフィス」を構えるに至ったのである。

同社代表取締役CEO・武石幸之助氏は、渋谷を拠点にこれまで多くのベンチャー企業を生み出してきた株式会社サイバーエージェントの出身。「ワンオブゼム」という社名には、いくつもある中の1つ――すなわち、他のモノでいくらでも代替えの効く存在――というどちらかといえばマイナスの意味があるが、これは、武石氏の言葉によれば「日本もグローバルから見ればワンオブゼムな市場であることを謙虚に認めねばならない時代が今だと感じています」という自戒の念を込めたネーミングであるという。その自戒の念ゆえにか、同社の構築したオフィスは社名の持つ意味とは裏腹に、きわめて独創的な「他にない」唯一無二の存在感を感じさせるものになっている。

「(武石代表は)もともとクリエイティブなオフィスに関心があり、シリコンバレーの有名企業であるフェイスブックやグーグルなどのオフィスからもインスピレーションを受けてきました。といっても、たんなる表面的な模倣という意味ではありません。現在のオフィスをご覧になればお分かりのように、『オフィスが働き方を変える』という考え方に基づいて構築されています」(高橋氏)

 

楽しく働ける場所から楽しいコンテンツが生まれる
緑化した壁を背に、ベンチシートで仕事をする「カフェスペース」

緑化した壁を背に、ベンチシートで仕事をする「カフェスペース」

 

「ラウンジスペース」はホテルのラウンジをモチーフにしている

「ラウンジスペース」はホテルのラウンジをモチーフにしている

同社の掲げるポリシーは「自分たちが楽しく働かずに、楽しいコンテンツは生み出せるもんか」。すなわち、同社のオフィスは何より「自分たちが楽しく働ける場所」として位置づけられている。一般に、企業のオフィスに求められるのは「生産性」であり、「作業効率」であることを考えると、それらは往々にして「楽しく」という要件とは相反することがある。特に日本企業では、生産性や効率を重視するあまり、楽しさを犠牲にする傾向が少なくないといわれる。

近年社会問題にもなっている「ブラック企業」などは、必ずしも日本特有の問題ではないにせよ、やはりそうした傾向が背景にあるのかもしれない。こうした「矛盾」に対して、同社のオフィスはどのような回答を用意しているのだろうか。

「仕事をするとき、賑やかなカフェの方がはかどるという人もいれば、静かな個室で集中した方がはかどるという人も当然います。つまり、自分にとってもっとも生産性の高い環境というのは、人それぞれ違うというのが私たちの考えです。ならば、オフィスの中にそうした環境をすべて取り込んでしまえばいいのではないか、という発想がこのオフィスの出発点になっています」(高橋氏)

仕事が順調にはかどっているとき、人はストレスを感じにくい。逆に、一向に進まなければ強いストレスを感じ、ますます仕事がはかどらなくなる。つまり、仕事がはかどる環境とは、余計なストレスに悩まされることもなく「楽しく」働ける環境のことなのだ。

同社のオフィスの基本コンセプトは「街」であるという。それも、画一的で清潔な街ではなく、ごみごみした雑多な街――ちょうど、同社オフィスの立地する新宿駅東口方面の街並みとイメージがぴたり重なり合う。同社がオフィスを構えるのに、インターネット業界の関連企業が多数集積する渋谷ではなく、新宿という立地を選定したのは、武石氏がもともと新宿の街並みが好きだったということに加えて、そんな理由もあるのだという。

近年は通信環境の整備と各種情報端末の発達により、必ずしもオフィスに出勤しなくても、あるいはオフィスそのものを持たなくても、街中の好きな場所で仕事ができる時代になった。いわゆる「ノマドワーカー」と呼ばれる人々は、街全体を自分のオフィスとして自由なワークスタイルを満喫しているように見える。同社もまた、会社の制度としてノマドワークを認めているという。だが、それだけでは十分ではないという考え方も根底にあるようだ。

武石氏の言葉によれば、オフィスというものは事業を拡大する上で、マーケットにおける存在感を獲得する戦略にとって有効な武器のひとつである。そのため、オフィス構築にあたっては、自社らしい環境と働き方を社内外にメッセージとして伝える空間をゼロベースから考えてきたという。

「武石自身も以前はノマドワーカーでしたし、本来、PCが1台あればどこであろうと仕事はできると思います。けれど、多人数でひとつの仕事をする上では、人が集まってコミュニケーションがとれる場所というものは絶対に必要だという考えがあり、このオフィスはそういう場所としてつくられています」(高橋氏)

 

街中のさまざまな場所をイメージしたファシリティ
自宅のリビングルームを思わせるゆったりした「ソファスペース」

自宅のリビングルームを思わせるゆったりした「ソファスペース」

4階エレベータホールからエントランスに向かうと、ガラス扉越しに、正面の黒い壁に流麗な筆記体で書かれた「(the)One of them,inc.」の文字が目に飛び込んでくる。よく見ると、黒い壁と見えたのは黒色のガラスで、内側に椅子とテーブルが置かれているのがうっすらと見える。通称「ブラック」と呼ばれる黒い会議室だ。

向かって左手、「ブラック」の斜め向かいは「待合スペース」だ。四角い白革張りのベンチが、中央の植栽を囲んでいる。向かって右手には、3段ほどのステップを持つ木目床のステージがある。本誌取材当日にはここに丸テーブルがいくつか並べられ、働いている社員たちの姿があった。

「ちょうど今、新卒説明会のために一時的にレイアウトを変更していますが、ふだんはこの場所を利用して、毎週月曜日朝10時30分から全体ミーティングを開いています。」(高橋氏)

管理やコミュニケーションのツールとしてスカイプなども導入されているが、機械だけに頼らず、できるだけフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションの機会を増やそうというのが武石氏の狙いだという。

「ブラック」の背後にもうひとつ、通称「ホワイト」という会議室がある。こちらは白色ガラスに囲まれた個室で、「ブラック」よりも大人数を収容することができるようになっている。

「会議室はこの2つしかないので、お客様が立て込んだ混雑時などには調整が必要ですが、オフィス内の至るところにホワイトボードや黒板が設置してあるので、社内ミーティングの場所には不自由していません」(高橋氏)

「ホワイト」の奥へ進むと、突き当たりの壁が一面緑化された通称「カフェスペース」に出る。壁際にベンチシートが伸び、四角いテーブルを並べてここでも社員たちが熱心に働いている。その隣は、植栽の鉢植えと花柄の壁紙が印象的な「ラウンジスペース」だ。ここには、ホテルのラウンジにあるような脚を伸ばして座れる革張りのソファが設えられている。さらにその隣にあるのが、「コンセントレートチューブ」と名づけられた照明を落とした穴蔵のような空間である。

「『コンセントレートチューブ』はその名の通り、集中力を高めるための工夫を施したワークスペースです。壁に音を吸収するスピーカーを設置し、静かな環境でじっくり作業できるため、特にデザイナーの人たちに人気があります」(高橋氏)

「コンセントレートチューブ」の手前、通路を挟んで「ホワイト」のある真横には、ピンク色の内壁で囲まれた4人掛けのボックスシートが2つ並んでいる。ファミリーレストランのボックス席をモチーフにした通称「ファミレススペース」だ。これは近年導入する企業が増えているファシリティだが、同社の場合、テーブルの横の壁だけでなく、テーブルの天板もホワイトボードになっているのが特徴的である。

「『ファミレススペース』はお互いの距離感が近く、踏み込んだ話し合いができるので、ミーティングの場として社員から人気のある場所になっています」(高橋氏) 「ファミレススペース」の手前、「待合スペース」の奥には青いプラスチック製のコンテナのような小屋が置かれている。小屋には1畳ほどの小部屋に分かれており、卓上スタンドとPC、座椅子だけが置かれたシンプルな空間になっている。マンガ喫茶をモチーフとした通称「漫喫スペース」である。

ここまでで、150坪弱あるオフィス面積の約3分の2。残る3分の1は、仕切りのない開放的な大広間となっている。

 

壁際に置かれたスケートボード。気分転換に乗って遊んでもOK

壁際に置かれたスケートボード。気分転換に乗って遊んでもOK

オフィス中央に位置する大テーブルもワークスペース

オフィス中央に位置する大テーブルもワークスペース

 

オフィスの求心力を強化し、楽しく仕事ができる会社に

エントランスから向かって左手の奥に広がる大広間には、本格的なバーカウンターや、大型ソファセットと大画面テレビなどセレブのリビングルームのようなラグジュアリーな空間が配置されている。現在、同社には正社員とベトナム支社からの出向社員、インターンなどを含めて約50名が勤務しているが、あと30名程度は収容可能だという。

「職種を問わず、完全フリーアドレスなので、朝出社したらどこでも好きな場所を確保して仕事ができるようになっています。各自に1台MacのノートPCを支給しており、Apple社の大型ディスプレイ『Thunderbolt』を社内のあちこちに置いているので、自由に動かして使用することができます。希望によってはノマドワークや在宅ワークも可能なのですが、このオフィスができてからは、『会社で仕事をしていた方が楽しい』と言って会社にいる人が多いですね」(高橋氏)

それだけ、現在のオフィスに求心力があるということだろう。カフェ、ファミリーレストラン、マンガ喫茶など、ノマドワーカーが好んで仕事をする場所を社内に再現した武石氏の狙いは、見事に成功したといえそうだ。同時にそれは、対面コミュニケーションを重んじ、オフィスに出社することでその機会を少しでも増やそうと考え、そのために魅力あるオフィスづくりに挑んだ武石氏の熱意が社員一人ひとりに伝わったということでもある。

この同社のオフィスは、2012年度の「第25回日経ニューオフィス賞 クリエイティブ・オフィス賞」を受賞している。街中にあるさまざまな環境をひとつの建物、それもワンフロアに収めるというのはきわめて斬新な発想だが、考えてみれば「多機能をコンパクトサイズに集約する」というのは日本人の得意分野である。その意味で、同社のオフィスは、日本の強みを存分に活かしたファシリティデザインといえるかもしれない。

吸音スピーカーで集中力を高める「コンセントレートチューブ」

吸音スピーカーで集中力を高める「コンセントレートチューブ」

テーブルがホワイトボードになっている「ファミレススペース」

テーブルがホワイトボードになっている「ファミレススペース」

コンテナ風の小部屋はマンガ喫茶をイメージした「漫喫スペース」

コンテナ風の小部屋はマンガ喫茶をイメージした「漫喫スペース」

「漫喫スペース」の個室内。閉じこもっての集中作業に最適な環境

「漫喫スペース」の個室内。閉じこもっての集中作業に最適な環境

PICK UP!

会議室
会議室「ブラック」の側面。黒板にはチョークで社内外からの寄せ書きが
会議室
「ホワイト」の室内。テーブルの天板は廃材にコーティングを施している
カフェスペース
緑化した壁を背に、ベンチシートで仕事をする「カフェスペース」
ラウンジスペース
「ラウンジスペース」はホテルのラウンジをモチーフにしている
ワークスペース
オフィス中央に位置する大テーブルもワークスペース
ワークスペース
吸音スピーカーで集中力を高める「コンセントレートチューブ」
ワークスペース
テーブルがホワイトボードになっている「ファミレススペース」
ワークスペース
コンテナ風の小部屋はマンガ喫茶をイメージした「漫喫スペース」
ワークスペース
「漫喫スペース」の個室内。閉じこもっての集中作業に最適な環境
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