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interview 経営とオフィス

各企業がどのような経営戦略や人材戦略のもとに、オフィス移転を決めたのか?
代表者のインタビューでお届けします。

[ 株式会社ドワンゴ ]
コーポレート本部 総務部 部長 柚山 昌秀 氏

5月

23

2014

株式会社ドワンゴ 様
「明治座から歌舞伎座へ」“ドワンゴ流”のユニークなオフィスづくり。

「ネットに生まれて、ネットでつながる。」を合言葉に、「ニコニコ動画」をはじめとするネットワークエンタテインメントコンテンツおよびシステムの企画、開発、運用、サポート、コンサルティングを行い、ユーザーと双方向につくりあげるサービスを提供する株式会社ドワンゴ。同社は2013年7月、約10年間入居していた「浜町センタービル」から「歌舞伎座タワー」へ本社を移転した。「明治座から歌舞伎座へ」と話題になった新本社では、さまざまなユニークな取り組みが実践されているという。同社コーポレート本部 総務部 部長・柚山昌秀氏に話を伺った。

 

一度は無理と判断されたが再検討の結果、移転を決定

東京メトロ日比谷線と都営地下鉄浅草線の東銀座駅の直上にそびえる地上29階建ての超高層オフィスビル「歌舞伎座タワー」。ビルの前面に再建された5代目「歌舞伎座」の劇場部分と併せて「GINZA KABUKIZA」の新名称が冠せられている。伝統芸能の劇場と近代的なオフィスビルが一体化した同施設は、銀座再開発を象徴するランドマークのひとつとして、2013年2月の竣工前から各方面の注目を集めていたが、当初は同ビルに移転することになるとは想定していなかったと柚山氏は言う。

「以前のオフィスには約10年おりました。広さが足りないということはなかったんですが、南北に分かれていてフロア間の行き来がしにくいなど、なんとなく使い勝手が悪くて、社内でも『移転したい』という声はよく出ていましたが、なかなか実現しませんでした。今回の移転も、一度は『無理だ』という経営判断が下されていたのです」(柚山氏)

当時、同社の主幹事業である「ニコニコ動画」は黒字化に成功していたものの、社内には慎重論が根強かったという。

その後、改めて事業計画を一から見直してみたところ、今度は「いけるかもしれない」との見解が示され、再度検討してみた結果、最終的に移転へのGOサインが出された。 「今回の移転は、いわゆる“オフィス移転”ということだけでなく、オフィス移転そのものを当社らしく『ネタ』化するという考えもありました。以前のオフィスがあった『浜町センタービル』には明治座が入っていたのですが、当社の創業者である代表取締役会長の川上が『明治座から歌舞伎座へ』というキャッチコピーをつけ、弊社のコンテンツも大衆芸能から伝統芸能のように長く続いていくようになってほしいという想いをオフィス移転にも込めました」(柚山氏)

柚山氏の言う「ネタになるかどうか」、あるいは「洒落になるか、ならないか」は、同社においては重要な価値判断の基準となっているという。同社は基本的にフリーダムな社風で、後述するように、世間一般の会社では考えられないような風景に出くわすこともしばしばだが、そこには明確な一線があり、自由ではあっても決して無秩序ではない企業風土が生成されている。

かくして、一度は否定された「歌舞伎座タワー」への本社移転計画は、2012年9月に正式決定し、そこから移転プロジェクトが本格的に始動する。そして、それから10ヶ月後の2013年7月、同社とグループ3社(2014年1月にドワンゴモバイルが加わって4社)の移転が実施されたのである。

 

フロアごとに独自の方針で働きやすい環境創りを追求
11階オフィスゾーン。好きな場所で仕事ができるフリーアドレスを採用

11階オフィスゾーン。好きな場所で仕事ができるフリーアドレスを採用

新本社では、「歌舞伎座タワー」の11階から14階までの4フロアを使用し、オフィスゾーンはフロアごとに異なるコンセプトで構成されている。

11階を使用するドワンゴコンテンツではフリーアドレス制が採用され、従業員は私物をキャビネットに収納し、好きな場所で仕事をすることができる。窓際にはプロジェクトルームが並び、プロジェクト単位で数名のメンバーが結集して、ここを拠点としてグループワークができるようになっている。また、このフロアに限らず、デスクチェアの背もたれには一脚に一つずつ、オレンジ色の小さなバックパックが取り付けられている。

 

「バックパックの中身は、水と非常食、通信機器用の充電器、簡易トイレ、救急用品などの帰宅支援セットです。当社では『近隣手当』の制度で会社の近くに住んでいる従業員が多く、災害時には大半の従業員が徒歩で帰宅することになると想定されているため、オフィス内待機用の物資備蓄に加え、『帰宅支援』にも力を入れました」(柚山氏)

 

同。窓際にはプロジェクトルームが設置されている

同。窓際にはプロジェクトルームが設置されている

「近隣手当」とはIT系の企業によく見られる制度で、会社から一定の距離内(2駅区間など)に住むなどの条件を満たせば一定額が支給されるというものだ。会社側と従業員側の双方にメリットがあることから、近年は他業種にも拡がりはじめている。特に3.11震災以降、「災害時にも歩いて帰宅できる」というメリットが注目されている。

13階のオフィスゾーンは、おもにドワンゴの開発部門が使用している。こちらは固定席で、個々の席を高いパーティションで囲った、独立性の高い集中作業向きの環境となっている。ここで目を引くのは、デスク周りに持ち込まれた従業員の私物の数々だろう。ぬいぐるみやフィギュアはもちろん、自分たちでデザインしたという某スタッフの似顔絵パーカー、ビニール製の葉っぱ(?)、メイド服(!)など……。パーティションの高さを超えて棚を増設したり、天井から吊るしたり、個人の占有スペースを目いっぱい使ってカスタマイズされている。

「ここでも、重要なのはネタとして許されるかどうかです。たいていは黙認されますが、あまりにも下品だったり、公序良俗に反するものはさすがに上司も注意します。従業員の方もそのへんはわかっていて、ぎりぎり『許される』範囲でやっているようです」(柚山氏)

 

 

すべての椅子に帰宅支援用の防災バックパックを完備

すべての椅子に帰宅支援用の防災バックパックを完備

13階オフィスゾーン。個人のエリア内は自由にカスタマイズできる

13階オフィスゾーン。個人のエリア内は自由にカスタマイズできる

 

“カキネ”を越えてコミュニケーションがとれるオフィス

総合受付のある12階は、新本社のなかでも中心的な位置づけにあるという。ここには来客を応対するゲスト用会議室、カフェテリア、ドワンゴの管理部門のオフィスなどが置かれている。エントランスに入ると、左手の白い壁面に同社の「ニコニコ動画」がプロジェクターで投映されているのが目に飛び込んでくる。モニターはオフィス内では至るところに設置され、常時さまざまな番組が流れているだけでなく、生放送を配信できる会議室もあり、そこから実況中継を送信することも可能になっているという。

エントランスをぐるりと取り囲むように配置されたゲスト用会議室には、正面から時計回りに「(仮)」「β」「γ」「RC」「夏」「原宿」「Zero」「Q」など、一見法則性の読み取れない――しかし、古くからのニコニコ会員にとってはなじみの深い――名称が冠されている。
「会議室には、歴代の『ニコニコ動画』のバージョン名がつけられています。一番手前の部屋が、移転当時の最新バージョンであった『Q』で、この奥に実況用のブースがあります。移転後にリリースされた、現時点(注:2014年4月15日)での最新バージョンは『GINZA』ですが、この名称をつけた会議室はまだ存在していません」(柚山氏)

ここまでは社外に開かれたオープンスペースで、ここを抜けると従業員専用のエリアとなっている。エントランスから通じる入り口を背にして、左手がカフェテリア、右手がガラス張りの社内会議室。中央に通路があり、左右をそれぞれ木製の低い垣根で区画している。これは、新本社のデザインコンセプトである「“カキネ”を越えてコミュニケーションがとれるオフィス」を象徴する造作となっている。

カフェテリアの長テーブルの周囲には37脚の椅子が用意されているが、これらはすべてデザインの違うものになっている。また、社内会議室と、前述のゲスト用会議室の壁面にはカラーガラスが使用されており、ホワイトボードとして文字を書きこむことができる。社内会議室の裏手は「路地裏スペース」と命名されており、休憩や仮眠のとれるソファや椅子などが置かれるなか、ゲーム機器と大型ディスプレイが陣取り、壁際の棚には各種ボードゲームが山のように積まれている。

 

12階カフェテリア。 37脚の椅子はすべてデザインが異なっている

12階カフェテリア。
37脚の椅子はすべてデザインが異なっている

12階社内会議室。壁はガラス張りで、通路側には“カキネ”を設置

12階社内会議室。壁はガラス張りで、通路側には“カキネ”を設置

この周辺には、社内用会議室の小区画がいくつかあり、それぞれ「四角いテーブルを囲む」「動く椅子を使う」など、さまざまな姿勢で打ち合わせができるようになっている。さらに、喫煙室もガラス張りにして、外を通る人から見えるようにしたという。

社内会議室背後の路地裏スペース。カーペットの柄は原っぱをイメージ

社内会議室背後の路地裏スペース。カーペットの柄は原っぱをイメージ

13階の階段正面にある畳スペース。打ち合わせや休憩などにも利用される

13階の階段正面にある畳スペース。打ち合わせや休憩などにも利用される

 

美容室や女子マネ弁当など、独自のアイデアを次々に実行
11階の階段脇に置かれた打ち合わせスペース。通称「ファミレス・シート」

11階の階段脇に置かれた打ち合わせスペース。通称「ファミレス・シート」

新本社へ移転したことで、社内のコミュニケーション環境は目に見えて改善された、と柚山氏は実感しているという。

「以前のオフィスでは、メッセンジャーなどのツールを使用してのコミュニケーションが主流でした。仕事中、パソコン画面でメッセンジャーが点くと、相手が出社したんだろう、と判断したり……。しかし、この新本社は自分の肉眼で相手の所在を確認し、肉声をかけるコミュニケーションが成立しやすい環境になっています。その象徴となっているのが、オフィスのど真ん中に設けられた内階段です」(柚山氏)

フロア間の移動をスムーズにするために設置された内階段だが、フロアのほぼ中央に位置しているため、ここを昇り降りする人があると、オフィス内のどの席からでもだいたい見ることができる。川上量生会長、荒木隆司社長をはじめ、同社の経営陣もひんぱんに利用しており、「用事のあるとき、決裁権者をつかまえやすくなった」と従業員からも好意的に受け止められているという。

14階には最大108名収容可能なセミナールーム、さらに先日オープンした同社専用の美容室「artifata GINZA KABUKIZA店」などが設置されている。
「高度経済成長期のころには、大企業や官公庁にはオフィス内に床屋さんがあるのは珍しくなかったといいます。美容室はその21世紀的なリ・デザインとして、表参道の高級美容室の出店を仰いで、一流のスタイリストによるサービスを社内価格で受けられるようになっています」(柚山氏)

 

美容室では髪を切りながらノートパソコンで 作業することもできる

美容室では髪を切りながらノートパソコンで
作業することもできる

社内にあることで時間も節約でき、他部署の人間との交流も促進される

社内にあることで時間も節約でき、他部署の人間との交流も促進される

美容室内にはWi-Fi環境や電源も完備され、カットやスタイリングの最中にもノートパソコンを開いてデスクワークや打ち合わせができるだけでなく、設置されたカメラを通じて“髪を切りながらニコニコ生放送を配信する”こともできる。また、特に男性従業員の場合、街中にある美容室に自分から足を運ぶのは敷居が高いが、社内にあることで心理的にも利用しやすくなっているらしく、連日予約で盛況だという。

「当社のエンジニアは裁量労働制なので、必ずしも朝から出社する必要はありません。しかし、チームでのディスカッション等、早めに全員が揃った方が都合が良い場合が多い。また、生活時間が不規則だと、彼らの健康上の心配もあります。そこで、2013年9月から『女子マネ弁当』という企画を実施しています」(柚山氏)

これは中学校や高校の運動部系クラブ活動をイメージして、毎朝10時30分から、えんじ色のジャージを着用した女子マネージャーたちと一緒にラジオ体操をしようという、じつにユニークな仕掛けである。ラジオ体操に参加してスタンプカードにスタンプをもらうと、カフェテリアで通常の弁当より少しだけグレードアップした「女子マネ弁当」が配布される、というシステムだ。

「今ではエンジニアの多くが毎朝自主参加しています。『何時に出社しなさい』と命令するのではなく、こんなしくみをつくってしまうのが“ドワンゴ流”なのかもしれませんね」(柚山氏)

 

女子マネ弁当のスタンプカード。ラジオ体操に参加するとスタンプがもらえる

女子マネ弁当のスタンプカード。ラジオ体操に参加するとスタンプがもらえる

PICK UP!

エントランス
12階総合受付。左手の壁に「ニコニコ動画」の画面が投映されている
執務エリア
11階オフィスゾーン。好きな場所で仕事ができるフリーアドレスを採用
会議室
同。窓際にはプロジェクトルームが設置されている
執務エリア
13階オフィスゾーン。個人のエリア内は自由にカスタマイズできる
カフェテリア
12階カフェテリア。
37脚の椅子はすべてデザインが異なっている
会議室
12階社内会議室。壁はガラス張りで、通路側には“カキネ”を設置
フリースペース
13階の階段正面にある畳スペース。打ち合わせや休憩などにも利用される
打ち合わせスペース
11階の階段脇に置かれた打ち合わせスペース。通称「ファミレス・シート」
美容室
美容室では髪を切りながらノートパソコンで
作業することもできる
美容室
社内にあることで時間も節約でき、他部署の人間との交流も促進される
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