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9月

03

2012

首都圏 大手町・丸の内・有楽町地区再開発

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9月1日は「防災の日」――。昨年3月11日に発生した東日本大震災の影響もあり、この日は全国各地で国や自治体、企業などが主催する防災訓練が熱心に実施されている。

 

3.11震災時、東京都では震度5強の揺れが観測され、千代田区の九段会館で天井が崩落し、2人が死亡、60人以上の負傷者が出た。また、東京都全体で約352万人もの帰宅困難者(3月11日のうちに帰宅できなかった人)が発生したと推計される(東京都「首都直下地震帰宅困難者等対策協議会」調べ)。東京都のまとめた「首都直下地震による東京の被害想定」によると、首都圏が直下型地震に襲われた場合、東京23区で346万人が帰宅困難に陥ると予測されている。とりわけ、千代田区で発生すると見込まれる帰宅困難者は57万人にのぼり、帰宅困難者の発生比率(地震発生時に千代田区にいた人のうち帰宅困難となる人の割合)は66%、じつに3人に2人が家に帰ることができなくなるという。千代田区、特にオフィス街が集積する大手町・丸の内・有楽町――通称「大丸有地区」の独自の調査では、最大30万人の帰宅困難者が発生すると想定している(「大丸有地区災害に強いまちづくり検討委員会」調べ)。再開発が進むなか、大丸有地区が目指す“災害に強いまちづくり”「BCD(Business Continuity District/事業継続基盤強化地区)」についてリポートした。

 

日本の中枢を守るべく、動き出した大丸有BCDとは。

再開発の槌音が響くなか、強まる首都直下地震への警戒

img_002大丸有地区では「東京サンケイビル」(第1期2000年/第2期2002年竣工)を皮切りに、「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」(2001年)、「丸の内ビルディング(丸ビル)」(2002年)、「丸の内中央ビル」「丸の内トラストタワーN館」(2003年)、「丸の内オアゾ」(2004年)、「東京ビルディング」(2005年)、「三菱商事ビルディング」(2006年)、「新丸の内ビルディング(新丸ビル)」「有楽町イトシア」「グラントウキョウ ノースタワー/サウスタワー」(2007年)、「丸の内パークビルディング・三菱一号館」「丸の内トラストタワー本館」(2009年)、「三井住友銀行本店ビル」(2010年)、そして「丸の内永楽ビルディング」「JPタワー」(2012年)等々、10年以上前からほぼ毎年、複数の新築ビル供給が続いている。今春オープンした「JPタワー」でひとまず丸の内地区の再開発は一段落し、今後は大手町地区を中心に再開発が進んでいくことになる。

 

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9月末には「大手町フィナンシャルシティ ノースタワー/サウスタワー」の竣工を控えており、さらに2014年には「読売新聞社新社屋」「大手町1-6計画」「日本生命大手町ビル(仮称)」がそれぞれ竣工を迎える予定で、今なお建設の槌音が続いている。皇居前というステータス、東京駅前という交通アクセスの利便性に恵まれ、オフィス街として100年以上の歴史を持つ大丸有地区だが、昨年の3.11震災以降、改めて「首都直下地震」への警戒を強め、万一のための備えを進めている。今年3月19日、大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会の主催で開かれた『災害に強いまちづくりフォーラム2012』も、そうした万一のための備えのひとつであるといえる。

 

同フォーラムでは、大丸有地区が目指している「BCD(Business Continuity District/事業継続基盤強化地区)」についての基調講演や、大丸有地区内の会員企業(NTT東日本、三菱東京UFJ銀行、三菱地所)による防災対策の紹介とディスカッション、さらに海外への情報発信についての報告などが行われた。

 

BCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)については3.11震災以降、地域を問わず策定を検討する企業が増えているという。だが、帝国データバンク(株)が今年3月に発表した「BCP(事業継続計画)についての企業の意識調査」によると、BCPの認知度は企業全体で61.2%となったものの、策定率はわずか10.8%という結果が出た。大企業の策定率は30.9%に達しているが、中小企業は8.6%と格差が拡がっているという。大企業の本社機能が集積する大丸有地区では当然、策定済みの企業が他の地域に比べて格段に多いが、それでも企業単体のBCPでは、万一の際に確実に機能するとは言い難い。

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大丸有地区が目指す災害に強いまちづくり

 

BCPとは事業者・事業所単位で策定するビジネスプランであるから、企業により目的や優先項目がそれぞれ異なるのは当然である。首都直下地震のような広域災害の場合、企業単体のBCPが100%機能するためには、企業が立地する地域との融通性の高い連携が不可欠となる。そこで浮上するのが、DCP(District Continuity Plan/機能継続計画)という考え方だ。すなわち、大丸有BCDとは、BCPとDCPの連携により、「基幹インフラの機能が途絶しない、企業BCPを高い水準で実現させるエリア」を構築することなのである。

具体的には、たんなる建物の耐震性能だけでなく、電力・熱・通信・水道などの強靭な基幹インフラを備えた「高水準ビル」(大丸有地区のビルは大半がこれに当てはまる)に加えて、より防災性能に優れ、医療機関などの設備も有する「防災拠点機能ビル」を配置すること。そして、これらの高水準一般ビル群と防災拠点機能ビル群の連携によって、地上と地下、屋内外の空間と一体となって機能継続を実現することだという。防災拠点機能ビル群では、複数のビルの連携によって情報発信・受信機能を持ち、水の供給や帰宅困難者への対応、医療機能などの防災拠点としての機能を発揮することが期待される。既存のビルの中では、丸ビル、新丸ビルなどが防災拠点機能ビルに想定されているという。最大30万人と推定される帰宅困難者の一時受け入れが可能なスペースを設置し、屋外の広場などに医療テントを設置して負傷者の対応に当たり、また災害に強い情報通信インフラによって常に正確な情報を避難者に提供する場としても有効なものとなるはずだ。

もちろん、大丸有BCDの実現にはまだクリアしなければならない課題も少なくない。だが、これらのプランのうち一部はすでに実施されており、一定の成果を収めていることも事実だ。たとえば、三菱地所(株)の報告によれば、3.11震災当日、同社のビル全体で3,500人、うち丸ビルと新丸ビルの2棟で1,500人の帰宅困難者を受け入れたという。また、大丸有地区で東京駅周辺防災隣組や行政と連携し、今年1月と2月に帰宅困難者対策訓練などを実施している。同社はもともと「関東大震災以来続けている」という丸の内総合防災訓練をはじめ、熱心な防災への取り組みで知られる企業である。まもなく竣工を迎える大手町フィナンシャルシティでも、大規模災害時には地域の災害ステーションとして機能するべく「国際医療モールによる救護活動」「一時避難スペースの提供」「備蓄倉庫の整備」などを展開する予定だという。なお、同社都市計画事業室長・細包憲志氏は前述の『災害に強いまちづくりフォーラム2012』において、「三菱地所では2010年までに既存のビルの約30%を新しいビルに建て替えてきましたが、2020年までには65%を達成する計画です。その中で、防災拠点を整備して、この大丸有地区を、エネルギーの確保も含め、より安全性の高いエリアとして整備していきたいと考えております」と語っている。img_005

 

連鎖型再開発がもたらす大手町の「これから」

大手町地区では「連鎖型再開発」と呼ばれる方式が採用されている。これは、いわゆる「玉突き移転で、新しいビルが完成したら一斉にそちらへ移転し、空いたビルを取り壊してまた新しいビルを建てる……というくり返しである。現在、第2次再開発事業となる「大手町フィナンシャルシティ」の最終段階にあるが、引き続き、現在「日本政策投資銀行、公庫ビル、新公庫ビル」が建っている土地で第3次再開発事業が行われる。これについては、去る7月26日に三菱地所(株)が東京都に連鎖型再開発の第3次計画内容を提出したことで概要が明らかになった。計画名は「大手町地区(B-2街区)」。敷地面積約11,200㎡の土地に、地上31階・地下4階・高さ約170mのオフィスビル「A棟」、地上18階・地下3階・高さ約90mのホテル「B棟」の2棟で構成される。現在、日本政策投資銀行と公庫ビルの建っている土地にA棟、新公庫ビルの建っている土地にB棟が建設される予定である。

大手町地区(B-2街区)では、ガスを利用した自家発電設備「ガスコージェネレーション(熱電併給)システム」の設置や、井戸水をトイレ洗浄水などに活用するシステム、1万人に対応できる下水処理能力を持つ浄化設備が設けられ、大丸有BCDを構成する一環となるという。

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