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12月

26

2012

首都圏 日本橋地区再開発

 

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img_002「お江戸日本橋七ツ立ち」と歌われた東京・中央区の日本橋。「七ツ立ち」とは「午前4時に旅立つ」という意味で、出発するのは京・大阪へ向かう大店の商人たちであったという。江戸時代の主要幹線道路である五街道の起点であり、江戸から地方へ向かう人々は日本橋から旅立ち、地方からやってくる人々は日本橋で初めて江戸の地を踏むことになっていた。日本橋には魚河岸(物流の中心)、金座・銀座(金融の中心)、歌舞伎座(娯楽の中心)などが集積し、文字通り江戸の――すなわち日本の中心地だったのである。

 

その後、戦後の復興期まで日本経済をリードしてきた日本橋だが、都内各所に目新しいビジネス街が開発されていくなかで、いつしか歴史と伝統の街となっていた。しかし、21世紀を迎えた現在、日本橋に新しい潮流がわき起こりつつある。ふたたび日本の「経済」「商業」「物流」「金融」「娯楽」の中心地として再生の朝を迎えた日本橋をリポートする。

 

江戸の中心を21世紀に蘇らせる日本橋再生計画の全貌とは

都市の景観を保全しつつ、足りない要素を補完する

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21世紀最初の年である2001年7月、日本橋一丁目交差点の旧白木屋ビルが取り壊され、新世紀の日本橋のシンボルマークとなるべき新築ビルが着工した。2004年1月に竣工したこの「日本橋一丁目ビルディング(COREDO 日本橋)」こそ、三井不動産(株)が主導する“日本橋再生計画”の記念すべき第一弾となった。「COREDO」とは、「CORE(中心・核)+ EDO(江戸)」すなわち「江戸の中心」を意味する造語である。帆船の帆をモチーフにしたという曲面ガラス張りのファサードデザインは、そのまま遠大なプロジェクトの船出を象徴する強烈なキービジュアルとして今なお健在だ。

 

続いて、2005年7月には、中央通り沿いに「日本橋三井タワー」が竣工する。日本橋室町地区の中央通り沿いには、国の重要文化財に指定されている「三井本館」や東京都選定歴史的建造物である「日本橋三越本店」が建ち並び、他にない日本橋ならではの景観を形づくっている。「三井本館」は1929年竣工、築80年を超える現役のオフィスビルである。これらの歴史的建造物に隣接する超高層ビル「日本橋三井タワー」は、低層部が地上31m(100尺)のラインに合わせて、周辺の日本橋の景観に融合するようにデザインされている。また、同ビル高層階に誘致されたマンダリン・オリエンタルホテルは、先進的なビジネスエリアに不可欠な要素のひとつでありながら、これまで日本橋ではほとんど見られなかった高級ホテルである。こうしたエリア内における“足りない要素”の補完は、日本橋再生計画の重要な柱のひとつだ。

 

img_004その後、日本橋室町地区ではさらなる再開発が進んでいく。2007年に室町東地区の都市計画が決定し、中央通りをはさんで「日本橋三井タワー」の正面には「日本橋室町野村ビル(YUITO)」が、「三井本館」の正面には「室町東三井ビルディング(COREDO室町)」が、2010年9月、ほぼ同時に竣工を迎える。さらに、YUITOとCOREDO室町の中間には「(仮称)千疋屋日本橋ビル」が2013年3月の竣工を控えており、その東側には福徳神社の社務所、そして仲通りをはさんだ2-5 街区では福徳神社の再建が進んでいる。また、仲通りをはさんだCOREDO室町の東側では「(仮称)室町東地区開発計画2-3街区」が2011年11月に、さらに東寄りの昭和通り沿いでは「(仮称)日本橋本町2丁目計画」が2011年2月に、江戸桜通りをはさんだ南側では「(仮称)室町東地区開発計画1-5街区」が2012年8月に着工している。

 

続々とスタートする日本橋周辺の再開発計画

 

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いっぽう、日本橋再生計画に先鞭をつけたCOREDO日本橋のある日本橋交差点周辺でも、多くの再開発計画が動き始めた。中央通りと永代通りの交差する十字路では、今この瞬間にも再開発の槌音が絶えなく続いている。

まず、中央通りをはさんだCOREDO日本橋の西側。かつて「浅野ビルディング」「東京建物日本橋ビル」「日本橋中央ビル」「三井住友海上日本橋ビル」などが並んでいた土地では、現在2棟の中規模ビルが建設途上にある。中央通り側の角地に東京建物(株)による「(仮称)日本橋1丁目プロジェクト」、それに隣接する形で(株)三洋販売による「(仮称)三洋グループ日本橋ビル」の2棟である。前者は2014年11月、後者は2014年4月の竣工を予定している。

永代通りをはさんだCOREDO日本橋の南側では、「(仮称)日本橋二丁目地区開発計画」が都市再生特別地区の認可を受け、進行中だ。現在、永代通りに面したE、F街区で住友不動産(株)による「(仮称)日本橋二丁目地区北地区新築工事」が始まっている。今後、さらに南側3ブロックにまたがって三井不動産(株)と(株)髙島屋などから成る「(仮称)日本橋二丁目地区市街地再開発組合」によって複数棟の大規模ビルが建設される予定だ。ただし、国の重要文化財に指定されている「日本橋髙島屋」の建物外観はそのまま保全されることになっている。

 

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さらに視野を広げれば、昭和通りに面した日本橋川河畔で三菱倉庫(株)による「日本橋ダイヤビルディング」が2014年8月の竣工を予定している。これは東京都選定歴史的建造物である1930年竣工の「江戸橋倉庫ビル」の建替プロジェクトだが、低層階は旧建物の外観の意匠を保存し、新しい高層階の外観との調和を図ることで都市景観の保全に努めるという。また、河川に隣接する建築物として3.11震災の教訓を活かし、万全の浸水対策を施している。

 

永代通りを東京駅八重洲口方向に西へ進むと、「第一・第二鉄鋼ビルディング」や「不二ビル」の建替計画が予定されており、すでに取り壊し工事は始まっている。ほかにも、日本橋3丁目で建設中の「(仮称)メルクロス本社ビル」(2014年7月竣工予定)や、隣接する京橋地区で「住友商事京橋ビル」(2013年5月竣工予定)や「京橋トラストタワー」(2014年2月竣工予定)をはじめ、中小規模まで含めれば枚挙に暇のないほど膨大な数のプロジェクトが進行中であり、少なく見積もっても向こう10年間はこうした動きが続くものと見られる。

 

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一般に、多くの事業者や地権者がそれぞれ個別に再開発を進めていく場合、完成予想図はきわめて混沌としたものになりがちである。それはそれで活気に満ちあふれた風景であるかもしれないが、都市景観という点では成熟にはほど遠いものであろう。だが、この日本橋エリアに関していえば、その心配は杞憂であるといえる。何故なら、再開発事業の根底に「日本橋再生」という理念を掲げ、秩序と明確なビジョンをもって取り組む事業者が存在するからだ。

三井不動産(株)では、日本橋再生計画について次のように語っている。

「日本橋の再開発は、たんなるスクラップ&ビルドではありません。良いもの、優れたもの、次代へ受け継ぐべきものを残し、すでに失われた良いものを蘇らせ、さらに新しいものを創りだす――『残しながら、蘇らせながら、創っていく』というのがキーワードです。日本橋は江戸時代以来400年以上の歴史を持ち、地元には創業200年、300年という老舗が今もたくさん残っています。こうした地元の皆様に加え、官・学・民が連携して日本橋再生計画に取り組んでいます」(同社広報部)

すなわち、歴史的建築物や優れた都市景観などを「残し」、福徳神社や日本橋川の船着き場など失われたものを「甦らせ」、日本橋に人の流れをもたらす新しい魅力を「創る」。たとえば、室町地区再開発の項でも触れた「100尺」ラインの規定などはその代表的なものだ。地上約31mとは、もともとは「高層建築物の絶対的高さ制限」であったが、現在ではもっぱら都市景観保存のため、地上31mの低層部の上にセットバックした高層部を乗せる手法が一般的である。新しい魅力としては、日本橋室町地区にこれまでなかった、外資系高級ホテルや、誘致が決定しているシネマコンプレックスなどがその一例である。東京都の「アジアヘッドクォーター特区」構想のひとつに指定されている日本橋の再生は、これから本番を迎えようとしている。

 

日本橋地区の今後の再開発動向

日本橋地区の今後の再開発動向

 

①(仮称)千疋屋日本橋ビル
延床面積:約1,000坪
規模:地上9階/地下2階
主要用途:事務所、店舗
竣工:2013年3月予定
②(仮称)室町東地区2-3街区
延床面積:約19,000坪
規模:地上22階/地下4階
主要用途:事務所、店舗、シネマコンプレックス、住居
竣工:2014年1月予定
③(仮称)日本橋本町2丁目計画
延床面積:8,308坪
規模:地上17階/地下2階
主要用途:事務所、店舗
竣工:2013年1月予定
④(仮称)室町東地区1-5街区
延床面積:約8,800坪
規模:地上17階/地下4階
主要用途:事務所、店舗
竣工:2014年1月予定
⑤日本橋ダイヤビルディング
延床面積:約9,100坪
規模:地上18階/地下4階
主要用途:事務所、トランクルーム
竣工:2014年8月予定
⑥(仮称)三洋グループ日本橋ビル
延床面積:約2,500坪
規模:地上10階/地下1階
主要用途:事務所、店舗
竣工:2014年4月予定
⑦(仮称)日本橋1丁目プロジェクト
延床面積:約7,290坪
規模:地上13階/地下2階
主要用途:事務所、店舗、集会所、車庫
竣工:2014年11月予定
⑧日鐵日本橋ビル建替計画
延床面積:約7,780坪
規模:地上17階/地下3階
主要用途:未詳
竣工:2016年予定
⑨鉄鋼ビルディング建替計画
延床面積:34,480坪
規模:地上25階/地下3階
主要用途:A棟 事務所/B棟 サービスアパートメント
竣工:2015年春予定
⑩日本橋朝日生命館建替計画
敷地面積:378.70坪(現況)
規模:未詳
主要用途:未詳
竣工:2015年7月予定
⑪(仮称)日本橋二丁目地区開発計画
■ A街区
延床面積:約17,840坪
規模:地上29階/地下5階
主要用途:事務所
竣工:2018年度予定
■ B街区(髙島屋東京店)
売場面積:約17,847坪
規模:地上8階/地下3階(現況)
主要用途:百貨店
竣工:2018年度予定
■ C街区
延床面積:約43,560坪
規模:地上35階/地下6階
主要用途:事務所、店舗
竣工:2018年度予定
■ D街区
延床面積:約87坪
規模:地上1階/地下1階
主要用途:倉庫
竣工:2018年度予定
■ E街区
延床面積:約41,740坪
規模:地上35階/地下4階
主要用途:未詳
竣工:2017年11月予定
■ F街区
延延床面積:約786坪
規模:地上2階/地下2階
主要用途:未詳
竣工:2014年度予定
⑫不二ビル建替プロジェクト
敷地面積:約340坪(現況)
規模:未詳
主要用途:未詳
竣工:未詳

※CGパース提供:三井不動産(株)/三菱倉庫(株)/(株)髙島屋

 

 

 

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